京の職人衆 伝統を守り、今に挑む。 京の職人衆伝統を守り、今に挑む。

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金属工芸 仁科旗金具製作所

仁科雅晴

金属工芸。旗、纏をはじめ、神輿や山車(だし)の錺(かざり)金具、看板などを金属加工にて製造。大学卒業後「なんか忙しそうにしているから手伝おう」というような感覚で工房を継ぐ。京都府知事指定京都の金属工芸品指定、京都府京もの認定工芸士、京都の金属工芸品入選。

京都のハレの日のモノづくり。

京都のハレの日の
モノづくり。

私は仁科旗金具製作所という屋号の通り、旗の金具を中心に祭礼具、要はお祭りの関係の金具や纏(まとい)といったハレの日のためのものを作っています。曽祖父が京都で七宝焼き屋さんへ丁稚で入って、飾り職として独立したのが始まりです。

旗の一番上には金属の飾りがついていますよね。「旗の先にある頭ができるならちょっと大きいけど纏の頭も作れるでしょ?」という感じで纏の頭も作り始めたというわけです。ところが今どき、纏の頭だけなんていらないんですよね。棒はどうする、ひらひらの部分はどうする、柄(がら)はどうする、という話をしているうちに「纏を一式で仁科さんところでお任せできないの?」という感じで私の代になってからトータルで提案するようになってきて今に至ります。昔はそういったトータルコーディネイトをする目利きの「商いさん」がおりまして、私らは「商いさん」の企画立案されたものを忠実に作れば良かったのですが、今はそうもいかなくなっているんですね。

題材の背景をくみ取ってのモノづくり

題材の背景をくみ取っての
モノづくり

お祭りなんか特にそうですけども、場所も違えばしきたりも作法も、そこの町の人の好みも違うんですよ。なので「ここに入っている桜の模様をいっそのことこういう風な模様にしたら面白いんとちゃいますの」といって提案しても「いや、この桜の木にはこういう由来があって大切だからこの桜は残してくれ」という話になるわけです。そういう歴史的な背景や環境を理解してモノを作ることを心がけています。

纏や旗の金具というのは、真鍮や銅を切って、叩いて、曲げて、溶接して削って・・・という風に加工をしていくわけです。頭の部分は、立体になっていますから、ただ曲げるといっても勘所というんでしょうか、3次元にねじれの加工にしなければならないんです。ある程度はCADなんかで図面も引くわけですけど、そこから先は「これだったらこんな感じちゃうかな」という経験的な勘やアドリブを交えて作って行くわけです。今は他にも、エッチングでしおりを作ったり、インテリアグッズやステーショナリーなども同じような技術をいかして作っております。

マンガとアニメの良さを別の素材で表現したい。

マンガとアニメの良さを
別の素材で表現したい。

私らの仕事っていうのはメジャーで測れる仕事じゃないんですね。一つの品物を作って出来ましたって見せて、じゃあって計測してコンマ何ミリ違いますね、とかじゃないんです。ぱっと見た時にいいね、って思われれば合格。だから、見る人の気持ちや心が判断される際の基準になる仕事という意味で、アニメやマンガの世界は自分たちの世界と意外に似ているなと思っています。

一方、マンガやアニメは紙や画面での表現で、一度完成しているわけですから、それが金属に移った場合、どんな面白い表現をさせてもらえるんやろう・・・というのが僕ら金属の人間としての楽しみなんです。たとえば原画を金属で表現するために、金属のどこを抜くかとか削るかとか盛り上げるかとか。エッジを垂直にするか斜めにするかアールを付けるかでも変わって奥行きや立体感が表現できたりしますから。京都式でも、マンガやアニメの背景や世界を意識して作れればと思っています。

うちの作ってるものは、生活必需品じゃないんですよね。お客さんが生活に必要じゃないものを作って欲しいというてはんのに、結果的に喜んでもらえへんとなんの意味もなさないことになるんですね。ですから、技術だったり仕上げだったり、職人としてのいろいろ喜びはあるわけですけれども、最終的にお客さんが喜んでもらえるかな・・・と想像しながら作るのが楽しいんです。

京の職人衆

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