京の職人衆伝統を守り、今に挑む。
京念珠 中野伊助
念珠の生産の9割を占める京都でも240年あまり続く老舗最古参、中野伊助10代目。機械製造が発達した現代でも、天然石、木実などの念珠、ブレスレッド等を一つ一つ、玉を手で通して手作業で数珠を製作している。
創業1764年、私は10代目
ウチは京都の念珠を作らせてもらっています。いわゆるお数珠ですね。創業は明和元年、1764年ですからもう240年くらいは経っておりまして、私で10代目を数えます。数珠なので、石を丸く削るのが仕事と思われることも多いのですが、実は僕らの仕事というのは、別に数珠の玉を削っているわけではないんです。
玉は玉屋さんというのが別にあって石の専門の方、木の専門の方などがいらっしゃいまして、そうしたところから材料を仕入れ、それを形にするのが念珠屋の仕事というわけです。
簡単なようで、
修業が必要です。
念珠は宗派によって玉の種類や色が定められており、念珠屋は、それに応じて玉を揃えて形にするのが仕事です。また、玉を通す絹やナイロンの紐を絹の糸から編むのは全部手作りですから組み紐も仕事になります。
そんなに難しい技術ではないですが、それでもやっぱり多少年月を経ていかないと上手くはなりません。特に難しいのは先端の先端のポンポンみたいな梵天(ぼんてん)というところです。これは4つとも同じ大きさにならないといかんのですわ。
絹の糸を編んだ先端を一度ほぐしてハサミで刈り込んで同じ大きさの玉にしていきます。これがなかなか一番難しくて、修業が足らないとどんどん玉が小さくなっちゃう。散髪屋さんみたいなものですね。
本物であるかどうかは見ればわかります。
自分たちの念珠屋としてのこだわりの一つに仕上げがあります。石の玉が典型なんですけれども、同じ水晶でも紐を通す穴のところの角が丸めてなくて尖っていたり、穴の中を磨いていないと、摩擦で紐がすぐに切れちゃうんです。お寺さんやお仏壇屋さんに「はい、納めました」「はい、すぐに切れちゃいました」ではなんもならんわけです。
玉の穴が開けっぱなしだとザラザラで外から見て透明になっていないのは磨かれていないんです。言われなければ分かりませんが、そういう本物であるところはちゃんとこだわっていかないとならないと思っています。
ちなみに、それでも切れたりはしますが、よく縁起悪いと言わはるけど、そうじゃなくて自分の身代わりで切れているわけですから、かえって縁起がいいという風に思ってもらった方がいいですね。
数珠を現代の
アクセサリーにしたい。
京都式のプロジェクトに関しても、作り方や仕上げは本物の仕事をさせてもらって、一方、玉の種類や色は今の時代に合うように、いろいろ工夫していけたらなと思っています。
一般の方向けにはどんな色でもええわけですから、コラボレーションするアニメやマンガの世界に合うような組み合わせを考えていければと。
とにかく、今、とにかく数珠のことって誰も知らなへんです。数珠じゃなくて玉を使ったブレスレットでもええんですけど、もうちょっと数珠を知ってもらうきっかけになれば職人としてはええと思っています。